2020年の日・モザンビーク関係
令和3年3月4日
2月23日は天皇陛下の61回目の誕生日であり、日本政府は、この日をナショナルデーとして祝賀しています。例年、レセプションを開催し、モザンビークの皆様とともに天皇陛下の誕生日を祝福していますが、本年は新型コロナウイルス感染症の感染が拡大していることも踏まえ、やむなく中止することとなりました。その代わり、ノティシアス紙の紙面を借り、この1年間の日本とモザンビークの友好親善の歩みを報告したいと考えています。
日本とモザンビークは地理的には遠く離れていますが、インド洋と太平洋を一体と考えれば、海で結ばれた隣国です。海上交通による日本とモザンビークの交流は古く、1586年から翌87年に日本からローマに送られた使節団が、その帰路にモザンビーク島を訪れ、半年ほど滞在した記録が残っています。海は多くの国をつなぎ、人や物資の往来を支える重要な役割を果たしています。日本政府は「自由で開かれたインド太平洋」の観点から、同地域において、ルールに基づく国際秩序を構築し、自由貿易や航行の自由、法の支配といった地域の安定と繁栄を実現する上で、欠くことのできない原理・原則を定着させていくことを外交の柱の1つとしています。
昨年12月の茂木外務大臣のモザンビーク訪問の際、ニュシ大統領への表敬及びマカモ外務協力大臣との会談において、海洋法執行分野での能力強化を通じ、地域の安定に貢献する旨を伝えたほか、地域の繁栄促進を目指して日本が官民を挙げて協力しているナカラ港開発の重要性を強調し、日本からモザンビークに貿易・投資促進官民合同ミッションの派遣を決定した旨を伝えました。これらは「自由で開かれたインド太平洋」に基づくものです。今後、新型コロナウイルス感染症が落ち着き次第、日本から官民合同ミッションをモザンビークに派遣します。同ミッションが、両国間の経済関係の強化、ひいてはモザンビーク経済の発展に寄与することを期待しています。
実は、モザンビークには、すでに多くの日本企業が進出しており、様々な分野でモザンビークの経済活動に貢献しています。例えば、カーボデルガード州沖のエリア1鉱区の天然ガス開発には日本企業である三井物産が参加しています。同ガス開発に関して、2020年7月に発表された協調融資総額の144億米ドルのうち日本の官民の金融機関の寄与分は50億米ドルに上っており、大型プロジェクトの事業資金面においても日本が重要な役割を果たしています。
2020年、世界中で大きな問題となった新型コロナウイルス感染症は、世界の人々の生命・尊厳、すなわち人間の安全保障に対する危機となっています。日本政府は、人間の安全保障に対して、「誰の健康も取り残さない」という指導理念のもと、モザンビークにおいて様々な支援を行っています。具体的には、2020年4月にUNICEFへ総額745,000米ドルの支援を決定し、モザンビークの医療・水・衛生に必要不可欠な物資等を供与しました。また、4月、モザンビークを含む25か国の債務救済のためIMFの大災害抑制・救済基金(CCRT)に計1億ドルを拠出しました。さらに、6月には、小型救急車やICUベッド等の保健・医療関連機材の供与(総額468万1千米ドル)を決定し、モザンビークの感染症対策及び保健・医療体制の強化に貢献しています。現在、途上国が新型コロナウイルスのワクチンが得られるよう日本は約1億6264万ドルを拠出しています。その他、本年2月には茂木外務大臣がCOVAXファシリティーに対して、合計で1億9860万米ドル支出を発表しました。これによって、製薬会社からワクチンを入手し、途上国や一部の先進国にワクチンを配布することが可能となります
多くの犠牲者を出しているカーボデルガード州の治安問題については、日本政府も懸念を表明しています。2020年12月のニュシ大統領の会見によると、テロリストの襲撃により、57万人以上が住む場所を追われ、国内難民になっています。悲惨な状況におかれている方々が少しでも安心できるよう、日本政府も様々な支援を行っています。例えば、10月には、IOM、WFP、UNHCR、ICRC及びOCHAへ総額420万米ドルの拠出を決定し、カーボデルガード州とその周辺地域の脆弱な2,500世帯に対する簡易住宅建設用資材や衛生用品の配布、約23,000人の国内避難民に対する食料配布,約290,000人の医療サービスへのアクセス改善等に貢献しています。また、12月には、沿岸警備隊に対して総額186万9千米ドルに及ぶ救命ボート、救命胴衣、無線機等の海難救助関連機材供与を決定し、海から避難してくる国内避難民への救助に貢献しています。また、2020年3月には同州の脆弱な地域及びサイクロン被災地域における社会安定化、紛争予防及び平和構築のため、UNDPに総額636,363米ドルを拠出し、IOMに対しては、同州の平和構築プログラム強化のため、総額93,481米ドルを拠出しました。さらに、2021年1月、食糧・生計支援、紛争とジェンダーに基づく暴力やセクシュアル・リプロダクティブ・ヘルスに関するサービス向上及び子どもの保護のためWFP、UNFPA及びUNICEFへ総額369万米ドルの拠出を決定しました。
(その他の支援)
その他、2020年に日本政府が実施したプロジェクトを紹介します。
水・衛生分野では、2020年12月、近年人口増加に伴う給水需要の高まりに十分に応えるだけの給水施設の整備が進んでいないニアッサ州に住む人々が安全な水にアクセスするため、無償資金協力で、総額2,009万米ドルの拠出を決定しました。
サイクロン・イダイからの復興では、2019年から学校の修復、ハザードマップの作成等を通じ、円滑な復興事業の促進と、より災害に強い社会の形成に貢献しています。さらに、2020年1月にはILOへ総額545,454米ドルの拠出を決定し、交通アクセス改善及び若手の雇用創出に貢献しています。
環境分野では、ウレネ最終処分場において、2018年2月の大雨の影響により崩落事故が発生し17名が死亡したことを受けて、2019年から日本の技術を用いたウレネ最終処分場の安全閉鎖に向けたプロジェクトを日本の環境省とともに実施し、2020年10月に崩落個所の工事が完了しました。今後、ウレネ最終処分場を安全に閉鎖するためには、崩落箇所以外にも同様の工事を実施する必要があり、その取り組みを加速させるため、12月に廃棄物運搬・埋設及び整地のための土木工事用重機(ブルドーザー、エクスカベーター)の供与(総額186万9千米ドル)を決定しました。
新型コロナウイルスの影響を大きく受けましたが、広報文化活動も継続して実施してきました。2020年度は、公邸料理人が3回に亘り幅広い世代に親しまれているナポリタン、ハンバーグ、エビの天ぷらのオンライン紹介、モレイラションギッサ氏と共催で、ラディソンホテルのVIVOに於いて日本酒と天ぷらのペアリング体験、東京オリパラのホストタウンである愛媛県の高校生とモザンビークの高校生をオンラインでつないで日本文化を体験するオンライン文化交流の3件の文化事業を実施しました。また、当館のインスタグラムや日本で育ったベンビンダ職員の日本での経験を綴った「Benvinda de Moçambique」も開設し、定期的に更新しています。当館のフェイスブックでは、文化事業の様子、大使館の活動、日本の紹介、日本に留学するモザンビーク人の声を更新していますので、見ていただけると嬉しいです。
今後も二国間の友好親善のために全力を尽くしていく所存です。
日本とモザンビークは地理的には遠く離れていますが、インド洋と太平洋を一体と考えれば、海で結ばれた隣国です。海上交通による日本とモザンビークの交流は古く、1586年から翌87年に日本からローマに送られた使節団が、その帰路にモザンビーク島を訪れ、半年ほど滞在した記録が残っています。海は多くの国をつなぎ、人や物資の往来を支える重要な役割を果たしています。日本政府は「自由で開かれたインド太平洋」の観点から、同地域において、ルールに基づく国際秩序を構築し、自由貿易や航行の自由、法の支配といった地域の安定と繁栄を実現する上で、欠くことのできない原理・原則を定着させていくことを外交の柱の1つとしています。
昨年12月の茂木外務大臣のモザンビーク訪問の際、ニュシ大統領への表敬及びマカモ外務協力大臣との会談において、海洋法執行分野での能力強化を通じ、地域の安定に貢献する旨を伝えたほか、地域の繁栄促進を目指して日本が官民を挙げて協力しているナカラ港開発の重要性を強調し、日本からモザンビークに貿易・投資促進官民合同ミッションの派遣を決定した旨を伝えました。これらは「自由で開かれたインド太平洋」に基づくものです。今後、新型コロナウイルス感染症が落ち着き次第、日本から官民合同ミッションをモザンビークに派遣します。同ミッションが、両国間の経済関係の強化、ひいてはモザンビーク経済の発展に寄与することを期待しています。
実は、モザンビークには、すでに多くの日本企業が進出しており、様々な分野でモザンビークの経済活動に貢献しています。例えば、カーボデルガード州沖のエリア1鉱区の天然ガス開発には日本企業である三井物産が参加しています。同ガス開発に関して、2020年7月に発表された協調融資総額の144億米ドルのうち日本の官民の金融機関の寄与分は50億米ドルに上っており、大型プロジェクトの事業資金面においても日本が重要な役割を果たしています。
2020年、世界中で大きな問題となった新型コロナウイルス感染症は、世界の人々の生命・尊厳、すなわち人間の安全保障に対する危機となっています。日本政府は、人間の安全保障に対して、「誰の健康も取り残さない」という指導理念のもと、モザンビークにおいて様々な支援を行っています。具体的には、2020年4月にUNICEFへ総額745,000米ドルの支援を決定し、モザンビークの医療・水・衛生に必要不可欠な物資等を供与しました。また、4月、モザンビークを含む25か国の債務救済のためIMFの大災害抑制・救済基金(CCRT)に計1億ドルを拠出しました。さらに、6月には、小型救急車やICUベッド等の保健・医療関連機材の供与(総額468万1千米ドル)を決定し、モザンビークの感染症対策及び保健・医療体制の強化に貢献しています。現在、途上国が新型コロナウイルスのワクチンが得られるよう日本は約1億6264万ドルを拠出しています。その他、本年2月には茂木外務大臣がCOVAXファシリティーに対して、合計で1億9860万米ドル支出を発表しました。これによって、製薬会社からワクチンを入手し、途上国や一部の先進国にワクチンを配布することが可能となります
多くの犠牲者を出しているカーボデルガード州の治安問題については、日本政府も懸念を表明しています。2020年12月のニュシ大統領の会見によると、テロリストの襲撃により、57万人以上が住む場所を追われ、国内難民になっています。悲惨な状況におかれている方々が少しでも安心できるよう、日本政府も様々な支援を行っています。例えば、10月には、IOM、WFP、UNHCR、ICRC及びOCHAへ総額420万米ドルの拠出を決定し、カーボデルガード州とその周辺地域の脆弱な2,500世帯に対する簡易住宅建設用資材や衛生用品の配布、約23,000人の国内避難民に対する食料配布,約290,000人の医療サービスへのアクセス改善等に貢献しています。また、12月には、沿岸警備隊に対して総額186万9千米ドルに及ぶ救命ボート、救命胴衣、無線機等の海難救助関連機材供与を決定し、海から避難してくる国内避難民への救助に貢献しています。また、2020年3月には同州の脆弱な地域及びサイクロン被災地域における社会安定化、紛争予防及び平和構築のため、UNDPに総額636,363米ドルを拠出し、IOMに対しては、同州の平和構築プログラム強化のため、総額93,481米ドルを拠出しました。さらに、2021年1月、食糧・生計支援、紛争とジェンダーに基づく暴力やセクシュアル・リプロダクティブ・ヘルスに関するサービス向上及び子どもの保護のためWFP、UNFPA及びUNICEFへ総額369万米ドルの拠出を決定しました。
(その他の支援)
その他、2020年に日本政府が実施したプロジェクトを紹介します。
水・衛生分野では、2020年12月、近年人口増加に伴う給水需要の高まりに十分に応えるだけの給水施設の整備が進んでいないニアッサ州に住む人々が安全な水にアクセスするため、無償資金協力で、総額2,009万米ドルの拠出を決定しました。
サイクロン・イダイからの復興では、2019年から学校の修復、ハザードマップの作成等を通じ、円滑な復興事業の促進と、より災害に強い社会の形成に貢献しています。さらに、2020年1月にはILOへ総額545,454米ドルの拠出を決定し、交通アクセス改善及び若手の雇用創出に貢献しています。
環境分野では、ウレネ最終処分場において、2018年2月の大雨の影響により崩落事故が発生し17名が死亡したことを受けて、2019年から日本の技術を用いたウレネ最終処分場の安全閉鎖に向けたプロジェクトを日本の環境省とともに実施し、2020年10月に崩落個所の工事が完了しました。今後、ウレネ最終処分場を安全に閉鎖するためには、崩落箇所以外にも同様の工事を実施する必要があり、その取り組みを加速させるため、12月に廃棄物運搬・埋設及び整地のための土木工事用重機(ブルドーザー、エクスカベーター)の供与(総額186万9千米ドル)を決定しました。
新型コロナウイルスの影響を大きく受けましたが、広報文化活動も継続して実施してきました。2020年度は、公邸料理人が3回に亘り幅広い世代に親しまれているナポリタン、ハンバーグ、エビの天ぷらのオンライン紹介、モレイラションギッサ氏と共催で、ラディソンホテルのVIVOに於いて日本酒と天ぷらのペアリング体験、東京オリパラのホストタウンである愛媛県の高校生とモザンビークの高校生をオンラインでつないで日本文化を体験するオンライン文化交流の3件の文化事業を実施しました。また、当館のインスタグラムや日本で育ったベンビンダ職員の日本での経験を綴った「Benvinda de Moçambique」も開設し、定期的に更新しています。当館のフェイスブックでは、文化事業の様子、大使館の活動、日本の紹介、日本に留学するモザンビーク人の声を更新していますので、見ていただけると嬉しいです。
今後も二国間の友好親善のために全力を尽くしていく所存です。